『知ってる顔が同じとは限らない』
09
 しばらくの沈黙のあとピト、とカグラの額にひんやりとしたなにかが触れた。
 わざわざ手甲を外した桐子の手である。

「……何しとん桐子ちゃん」

「熱は……無さそうね」

 そのやり取りを繋とガンダーラは少し羨ましそうに、紡は苦笑を、晋吾は難しい顔をして見ていた。
 そして熱が無いと確認した桐子は哀れむような視線を向けた。

「俺はまともや! キ○○イみたいな扱いすんなや!」

 いきなり「違う世界から来た」と言われて信じられる人間は稀であるが、実際カグラは別の世界の住人である。

「俺の居る世界には、君らの英雄『真木波 遊騎』が『真木波探偵事務所』っつー事務所の所長をやっとる」

 カグラの話を胡散臭そうに聞いている四人を見て、カグラは五十鈴に目配せする。
 カグラの意図を読み取った五十鈴は鞄から携帯電話を取り出して操作を始めた。
 程なくして五十鈴は携帯の液晶を四人に向けて見せた。

「「「「!?」」」」

 四人は画面の写真を見て眼を見開いていた。
 五十鈴に寄り添うように写っている三人の女性と一人の青年。
 無論桐子達が驚いているのは、件の探偵、『真木波 遊騎』と、彼の精霊ガウェインが写っている事だ。

「ど、どういう事? ご先祖様が……」

「慌て過ぎや紡ちゃん。 言うたやろ? 真木波君は俺の世界じゃ生きていて探偵やっとる。 警察の潮君とは仲悪いけどなあ」

「俺が?」

 いまいちピンと来ていない顔の晋吾にカグラは。

「せやせや、現場で居合わせる度に喧嘩しよるしな」

 別人ではあるが、自分が憧れている人物と喧嘩していることが許せないのであろう。
 晋吾は無愛想な顔に、不機嫌さが加わっていく。

「成程……別世界の同一人物、だから私や晋吾の名前も知っていた、と?」

「潮君はそうやね。 桐子ちゃんに関しては、また違う世界で会っただけや」

 「偉い美人さんやったから忘れられへんかったわ」との言葉は全員から無視された。


月光龍 ( 2015/07/22(水) 14:36 )