『知ってる顔が同じとは限らない』
06
(戦争中、かいな? いやあ……そりゃ潮君もバイオレンスになるわけや)

 カグラの居る世界は戦争など遠い昔の記録に残されているだけであり、実際に巻き込まれるということはない。
 だが、次元を旅する以上、そういった争いに遭遇することは何度かあり、カグラにとって初めての体験ではなかった。
 そしてそれらの体験は良いものではない物が多いものだ。

(スズの初旅行にこれはちょいハードやない相棒?)

「覚悟は良いな怪盗?」

 確実にカグラを葬るという気迫が、広場の空気をざわつかせる。
 カグラは溜め息を吐いてから晋吾より早く行動を始めた。

「相棒頼んだ!!」

――オォォ!

 咆哮を上げ、竜が実体化してランスロットへと迫る。

「迎撃しろ」

「分かってますわ!」

 ランスロットが再び武器の射出体勢に入るや否や――。

「ギャラクシカル・アウト!」

「ッ!?」

 竜の体が光り輝き、ランスロットを包んでいく。
 そして光が消えるころには竜も、ランスロットも広場から姿を消していた。

「貴様……ランスをどうした」

「心配あらへんよ潮君。 君と話したいからちょいと席外してもろただけや」

「貴様と聞く口など持ち合わせていない」

 忌々しそうに吐き捨て、晋吾は油断なく銃剣を構える。

「堅物やねえ、いや知ってたけども」

「一体何の騒ぎ?」

 周りの野次馬を押し退けて数人の男女が広場に入ってきた。
 先頭にいる女性が晋吾に近寄って行くのを見て、カグラは眼を見開いた。

(おっと? 桐子ちゃんやん……)

 漆黒の鎧を身に付けた女騎士の顔に見覚えがあった。
 RKの栄光に隠れた闇、それを力の源にする『ERK』、その使い手である『湯月 桐子』という。
 別次元である以上、カグラの先入観等無いに等しいが、晋吾の性格や相棒のランスロットの存在があると、否定しきれない部分があった。

(相ッ変わらず、美人さんやんなあ)

 そんな桐子の後ろに続くのは黒髪で桐子と同形の鎧を着た少年と、長く黒い髪を靡かせて歩く白銀に輝くスーツ姿の少女である。

「アンタ、街中でどんだけ力使う気だ?」

 鎧の少年が晋吾に食って掛かるが、晋吾は視線をカグラに向けたまま言葉を返す。

「裏切り者の刺客か……もしくは皇帝軍の者かもしれない相手をみすみす逃せるとでも?」

「いやいやいや、ちゃうちゃう」

 晋吾は必死に否定するカグラに耳を貸す様子はないようだ。

「晋吾様が本気を出さなければならない相手なのですか?」

 遠慮がちに少女が尋ねると、晋吾は一度頷いた。

「ランスを近接戦闘で圧倒した上で、面での攻撃にも対応する化物だ」

 晋吾の言葉に、心なしか悔しげな色が混じる。

「そんな風には見えないけど……」

 品定めでもするようにカグラを見る桐子。
 見られた本人は「そんなに見つめて……さては惚れたか?」と頬を赤らめている。

「事実だ。 今ランスも奴の精霊に封じられている」

「ッ!? そんな事が」

 警戒心を強める桐子に苦笑しながらカグラは口を開く。

「封じるなんて大層なもんでもあらへんけど……生憎俺にはまだその手段が残っとる」

 言うとカグラの背後に竜が2体顕現する。

「まだ2体もいるか……」

 口惜しげに竜を睨み付ける晋吾。
 対照的に冷静な桐子は、カグラを見つめて尋ねる。

「貴方の目的は一体何?」

「よーやく聞いてくれる? いやー潮君頭固くて固くて困っとったんよ。 桐子ちゃんは話分かる」

「何で私の名前を……」

「ま、その辺の説明も兼ねて移動せえへん? こんなとこじゃ落ち着いて話も出来へんよ」

 カグラの厚かましい提案に桐子と晋吾は顔を見合わせていたが、それに乗った方が得策と判断して場所を移して話す事とした。

「……俺達の城へと案内する……怪しい動きをしたら即刻処分するからな」

「分かっとる分かっとる。 な、スズ」

「う、うん」

 軽く返事をするカグラを胡散臭げに睨みながら、晋吾達は城へと案内を始めるのであった。

月光龍 ( 2015/07/18(土) 13:28 )