『知ってる顔が同じとは限らない』
05
「貴様……人の所有物に手を出しておいて人探しとは……随分と余裕だな」

 怒りに声を震わせながら晋吾は、自身の腰に備わった銃剣を抜き放つ。

「ランスちゃん、物扱いされとるけど、それでええのん?」

 晋吾の殺気も気にも留めず、ランスロットに尋ねるカグラ。
 ランスロットはほんのり顔を赤くして。

「何一つ間違っておりませんもの」

(あーあー、そこは全く変わらへんのね)

 盛大なのろけを見せつけられたカグラは辟易した顔を見せると、微かに首を傾けた。
 次の瞬間、鉛弾がカグラの頬を掠めていく。

「チッ……」

「この世界の潮君はバイオレンスやねえ……いや、あっちも大概やったね」

 建物破壊を省みずにカグラに攻撃を仕掛けてくる晋吾の姿を思いだし、身震いする。

「ランス、レイン。 野次馬には当てるなよ」

「心得てますわ」

「あっ、これあかんパターンや」

 ランスロットに命令を下す晋吾の雰囲気が変わったのを感じて、カグラは身構えた。

「ハゲのおっさん!」

「スキンヘッドだ!」

「どっちでもええねんそんなん! ドデカイの来るさかいスズ頼むで」

 そうとだけ言ってカグラはランスロットと対峙する。
 見れば既に彼女は臨戦体勢であり、いくつもの武具が宙を浮き、その切っ先をカグラに向けていた。

「塵一つ残らない物と思いなさい?」

 冷徹な死刑宣告と共に、矢のごとく武具がカグラを襲った。
 剣、槍、斧、金棒といった武器から場違いであるドリルのようなものも等しくカグラの身を穿こうと迫る。

「ほんとこの攻撃はチートやわチート」

 軽い溜め息を吐きながらカグラは身を反転、初撃を避けると避けた剣の柄を掴みそのままの勢いで飛来する武器……それも自分に直撃するであろう物を判別し、薙ぎ払い弾き飛ばした。
 驚愕に表情を固める観衆に爽やかな笑顔を向けると、カグラは手にした剣を放り投げた。

「当たるとは言ってへんけどね」

「貴方、何者ですの?」

「何、ってただの怪盗やで☆」

「カグ君、スゴい」

 今の一連の流れに五十鈴は感嘆の声を漏らす。

「……ランス手加減できる相手ではないようだ」

「そのようですわね」

 晋吾、そしてランスロットの纏う殺気に似た闘気が膨れ上がっていく。

「俺は構へんけど……ギャラリーがどうなるか分かったもんやないで?」

 先の射出で数人は離れたようだが、依然として二人の成り行きを見守っている人間は多かった。

「お前をそうしてでも排除すべき対象と判断した」

「見たとこ警察みたいなもんみたいやけど……市民の信用無くしても?」

「貴様が敵国の刺客である可能性があるのなら、俺は人に恨まれる事を厭わない」

 晋吾の剣幕、そして『敵国』というワードがカグラに嫌な予想を芽生えさせる。



月光龍 ( 2015/07/18(土) 13:27 )