『知ってる顔が同じとは限らない』
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「おいおい、潮君当たったら死んでまうやん」

 カグラの非難に対し、頭上から返答が帰ってくる。

「当てるつもりで放っている。 だが――」

 晋吾は溜め息を吐くと、苦笑とも微笑とも取れる表情を見せた。

「当たりはしないだろうがな」

「はん、ようやくわかってきた?」

 カグラは空を見上げて晋吾の位置を確認する。
 上空には機械の身体を持つ漆黒の鳥が飛翔していた。

「あれ、か」

 鳥に乗ってこちらを索敵、攻撃を仕掛けてきているのだろう。
 頭上から狙われたのではカグラに逃げ場はない。

「ほなら……これしかないやろ!」

 カグラは銀河眼を顕現させ、黒鳥の方へ向かわせる。

「やはりそう来るか……相手を頼む」

「はあ!?」

 晋吾以外の人間も乗っているのだろう、晋吾の言葉に素っ頓狂な声を上げる青年。

「あとよろしくね、達樹君」

「ちょっ!? 桐子さんまで!?」

 桐子の声も聞こえ、晋吾と桐子が飛び降りてくる。

「ああーもう! ライズ・ファルコン!」

 達樹と呼ばれた青年は黒鳥の軌道をずらして、光子竜との空中戦に臨む。

「うわあ……潮君も桐子ちゃんも無茶ぶりしよるなあ」

「すぐに捕まらん貴様が悪い」

 そんな事を言う晋吾の傍若無人っぷりに辟易するカグラ。

「そうですわねえ、すぐに捕まって頂ければ達樹さんも解放されるでしょうに」

 と、晋吾に同意するのは精霊のランスロットである。

「全く……本当に俺様キャラなのね……」

 カグラと同じく辟易しているのは桐子だが、彼女もまた達樹という男に面倒を押し付けている。

「適材適所という言葉もありますよ桐子」

 冷静に達樹を切り捨てたのは精霊のヘルガウェインである。

「今すぐ投降すれば、防衛の功績を加味して――」

「焚き付けたんわ君やで潮君? 俺がそんな言葉で止まると思うてるん?」

「ま、まずいよカグ君4対1って……」

 しかも、2体は精霊であり人間を越える身体能力を有している。
 人間である二人も相当の手練れだ。
 五十鈴の心配も当然だろう。

「あー、せやねえ」

「ここは銀河眼を――」

 2体目の銀河眼を具現化させて少しでも相手を分散させた方が得策であろう、と考えた五十鈴だったが――。

「久々に骨が折れそうや!」

 獰猛な笑みを浮かべたカグラが四人との距離を詰める。

「交渉、決裂か」

 手に持った銃剣を振るう晋吾。
 カグラの脳天を狙う正確な一撃、だがそれは空を斬る。
 最小限の動きで避けたカグラは、その勢いのまま晋吾に一撃を叩き込むべく拳を握るが――。

「マスターに触らせませんわ!」

「おおう!?」

 横槍、その文字通り横から槍が飛来しカグラは握った拳で槍を叩き落とした。

「隙あり、ですね」

 拳を振るった絶妙な隙を狙ってヘルガウェインがカグラの懐に迫っていた。

月光龍 ( 2015/12/01(火) 09:36 )