『知ってる顔が同じとは限らない』
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「っと、ここでええやろ相棒」

 銀河眼の背中を二回叩き、カグラは銀河眼に合図を送る。
 意図を察した銀河眼は高度を下げて、城下町の民家の屋根へと着地し、姿を消した。

「ここで良いのカグ君? もっとお城に近づいた方が――」

「それは俺の主義に反するんやわ」

 五十鈴の言葉を遮りカグラは口角を吊り上げた。

「恐らく、向こうは防衛策を講じとる。 それを避けて通るのは失礼やからね。 真っ向から掻い潜ったるんや!」

 力説するカグラに呆れる五十鈴だったが、同時に――。

(カグ君らしい、ね)

 と感じ、口元には微笑が浮かぶ。

「てなわけで、スズは此処で待っとって?」

「え……」

 カグラの一言に表情が凍り付く五十鈴。
 その顔が「また置いてくの?」と語っていた。

「いや、そんな顔されても……危ないさかい、連れてはいけへんよ」

 五十鈴の顔を見て困惑するカグラに、五十鈴は溜め息を一度吐いた。
 諦めてくれたかと思い安堵しそうになるカグラだったが、何も言わずデュエルディスクにカードを差し込む五十鈴を見て驚愕の声を上げる。

「ちょっ!? スズ! 何して――」

「【ミクロ光線】、発動」

 強烈な光が迸り、五十鈴を飲み込んでいく。
 みるみる内に五十鈴は小さくなっていき、親指と同程度の大きさになっていた。

「―――」

 何か喋っている様子だったが、あまりの高低差故――五十鈴本人の声が小さいこともあるが――に声は届いていない。
 見かねたカグラはしゃがみこみ、五十鈴を手のひらに乗せる。

「迷惑掛からない所に入ってる」

「思い切ったなあ……スズ」

 しれっと言う五十鈴に苦笑しつつ、カグラは五十鈴を自分のマフラーの中に差し込んだ。
 マフラーからミニマムサイズの五十鈴の顔が覗いている、といった様相である。

「ほんじゃ、ま……いきますか!」

「……うん!」

 五十鈴の返事を聞きながら、屋根から飛び降りるカグラ。
 仕事の時間である。





 正門に向かって走るカグラ。
 次第に正門の全容が見えてくると――。

「カグ君、門に10人くらい居るよ! どうする?」

 門を塞ぐように完全防備の騎士10人程が並んで槍を構えている。

「とーっぜん! 正面突破や!」

 速度を落とさず、むしろ加速して突っ込んでいく。
 カグラの姿を認めた騎士達はさらに動き出した。

「き、来たぞぉ!? ここを通すな!」

 槍を前方に構え、半分の騎士が突進し半分の騎士は門の防衛に回っている。

「全員来ないのは良い判断やね」

 槍を避け、受け流し、騎士の股下をくぐり抜け、突進隊は一瞬で突破される。
 その勢いのまま、地を蹴るカグラは飛ぶように間合いを詰めた。
 衝突を避けるために騎士が構えた盾を足場にカグラはさらに跳躍、防衛隊を飛び越した。

「俺が相手じゃなければ、やけどな! ほな!」

 と、ドヤ顔を見せつけて城の中庭へと侵入していく。

「放て!」

 遠間からの号令と共に、城壁から矢の雨が降り注ぐ。

「ちょっ!? 殺る気満々やん!?」

「キャアアアア」

 五十鈴の悲鳴と同時に落ちている枝を拾い、飛来する矢を次々と叩き落としていく。
 矢を落としながら庭園の木の影へと移動する。

「ふう……大丈夫かスズ?」

 死角に入り込み、一息吐いたカグラはマフラーの中を覗き込んだ。

「私生きてる?」

 矢を見て生きた心地がしなかったのだろう、そう感想を漏らす五十鈴にカグラは笑みを浮かべる。

「降りるなら今の内やで?」

「それはやだ」

「まあ、そう言うと思ったわ……しっかし、容赦あらへんなあ」

 と、カグラがぼやいていると――。

「相手が相手だからな……本気でいかせてもらう」

 聞き覚えのある青年の声。
 それを聞いたカグラは地面を転がってその場を離れた。

ガンッ

 と、地面に突き刺さる一振りの剣。
 それは寸分違わず、カグラの座っていた場所を捉えていた。

月光龍 ( 2015/11/17(火) 14:43 )