『知ってる顔が同じとは限らない』
03
「しっかし、いきなりこないに派手な登場してもて……どないしよ」

 人の出入りの多い城下町のど真ん中に、いきなりドラゴンが現れて消えたと思ったら人が降ってきたとあれば人目が着く。
 実際、何十という人が広場を囲んでカグラ達の出方を伺っていた。

「ま、注目されるのは嫌いやないし、ええか!」

 と、一人納得したカグラは五十鈴を下ろすと現地の人々に指を差した。

「俺はカグラ、次元を股に掛ける大泥棒カグラや! 覚えとけぇい!」

 決まった、とどや顔をかますカグラだったが、人々の視線はもう別の方向へと向けられていた。

「っとぉ? なんや感じ悪いわあ」

 気分を害したように呟くカグラを余所に、人混みを掻き分けて一人の男が姿を現した。
 どうやら人々の視線は彼に向けられているようだ。

「……襲撃者への警戒体制を強化しているという時に……誰だ俺の手を煩わせるのは?」

 黒い髪を短く切り揃え、元々切れ長の眼をさらに吊り上げて機嫌の悪さを強調した青年がカグラ達の前に近付いてきた。

「んん?」

 青年の顔を見て、カグラは訝しげな表情を見せ――。

「ああああああああ!?」

 指を差して驚愕する。

「人を指差して、無礼な奴だな……」

 機嫌の悪さをさらに引き上げながら青年は言うが、カグラが気にすることはない。
 というよりは気にする余裕等無かったのだ。

「『潮君』、何で君が此処に居るんや!?」

 カグラが居る世界の『精霊課課長:潮 晋吾』がそこにいたのだから。

「? 何故、俺の名を知っている? 貴様の顔など知らんぞ」

「ああん? 俺と君の仲やんけ! 忘れたとは言わさんぞぅ。 てか何で次元越えてんねん! 勤労意識高すぎやん!」

 一気にまくし立て、カグラは一息吐いてからあることに気付いた。

「あり?……君いつもの背広はどしたん?」

「何の事だ?」

 晋吾の格好、それがいつもと違う事に気付いた。
 カグラの知る晋吾はスーツをビシッと着こなす男のはずだが……今の彼は灰色のGジャンに黒のジーンズ、そして首に灰色のメンズネックレスを掛けている。
 その様子を見て――。

「ぶほっ!」

 カグラは噴き出した。

「う、潮君が私服、ぶはははは!」

 堰を切ったようにカグラは笑い出す。
 スーツ姿しか見たことの無かった晋吾が私服を着ていることがツボにハマったのだろう。
 だが、笑われる当人は当然良い気はしない。

「……ランス、彼奴を黙らせろ」

 殺気が隠った恐ろしく低い声と共に、金髪の見目麗しい女騎士が姿を現し晋吾に一礼する。

「マスターを笑う不届き者を見事討ち果たして御覧に見せましょう」


月光龍 ( 2015/07/14(火) 14:34 )