『知ってる顔が同じとは限らない』
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「で、結局戦う事なく戦闘が終わったの?」

「ふぉーふぁんよー」

「カグ君汚い」

 テーブルに並べられた料理を頬張りながら話すカグラを、呆れた風に見る五十鈴だった。
 戦闘が騎士達の勝利に終わった事を祝し、城では祝賀会が行われており、二人はその宴に招かれている。
 料理を飲み込み、カグラは口を開く。

「そーなんよスズ。 何時間も待ち惚けってのはちょっと堪えるわ」

「私もずっと待ってた」

 口を尖らせて言う五十鈴の姿に苦笑するカグラ。

「ハゲのおっさんも居ったんやろ?」

 カグラは瞬間的に飛んでくる武骨な拳を片手で受け止める。

「……そう、だけど」

 明らかに不機嫌になる五十鈴に、嘆息するカグラは五十鈴の頭を撫でた。

「待たせてすまんかったな」

「ん」

 顔を赤く染め、恥ずかしそうにする五十鈴だが、満更でもないのか気持ち良さそうに目を細めていると――。

「あっ、カグラさん! こんなところに居たんですか」

「何でこんな端に居るんだよ。 桐子さんが探してたぞ?」

 自分の分の食事を持った紡と繋がカグラのテーブルへ歩み寄ってきた。
 それに気づいた五十鈴は顔を真っ赤にしてカグラから遠ざかる。

「あー君等かあ。 いやー、なんか知らんけどパーティー会場に嫌ーな気配がしよってなあ。 隅っこに行かせてもろてるんよ」


「まさかっ!? 敵の残党――」

「あ、その類いやない。 俺の――まあ、天敵みたいなもんや」

 今にも飛び出していきそうな繋を言葉で制し、カグラは苦笑する。

(いやーまさか、この世界の俺がこない近くに来るとは思わへんかったわ……)

 別世界の自分、遭遇したときの影響に興味が無かった訳ではないが、そのリスクを考えれば避ける方が得策だろう。
 当たり前だが繋は頭に疑問符を浮かべたが、深く詮索はせずカグラ達の向かいの席に腰を下ろした。

「紡も座れよ」

 と、促す繋だったが、紡は大きく深呼吸した後に食事をテーブルに置くと、顔を真っ赤にして切り出した。

「カ、カグラさん」

「ほぉん?」

 いつの間にか口に食事を詰め込んでいたカグラは、間の抜けた返事を返す。

「今回の報酬をお渡ししたいので、少しお付き合い願います!」

 半ば叫ぶように言った紡は即座にカグラの手を掴み、引っ張っていく。

「お?お?」

 予想外の事態に困惑するカグラはバランスを保ちながら歩くのが精一杯であり、紡の成すがままの状態である。

「……」

「……」

 何が起こったか分からず、去っていく二人の背を見送る五十鈴と繋だったが――。

「ほう……意外と大胆なのだな彼女は」

 と、呟くガンダーラの声で我に帰った。

「ど、どういうことだ? なんで紡が怪盗と二人で!?」

「……カグ君……不潔」

 慌てふためく二人に溜め息を吐くガンダーラは一つ提案をする。

「そんなに気になるなら付いて行けば良いだろう」

 五十鈴と繋は顔を合わせると、どちらともなく頷いた。

「うし、ミッションスタートだっ!」

「光学迷彩アーマーを使う……」

 こうしてカグラ達の尾行ミッションが遂行されるのであった。

月光龍 ( 2015/11/05(木) 13:57 )