『知ってる顔が同じとは限らない』
24
「くっ、行きなさい!」

 シオニスの号令で残った騎士達は一斉に動き出す。
 剣、斧、槍、遠距離からは弓矢がカグラを襲う。

「温い温い。 ガー子ちゃん、ランスちゃんの二人の方が手強いで!」

 笑いながら、カグラは次々と騎士を粉砕していく。

(アイツを潰すには時間が掛かりそうね……)

 忌々しげな顔を見せ、そう判断したシオニスは、戦力を三つに分けその内二つを王城へと向かわせることにする。
 シオニスの目的はカグラではなく、城の陥落なのだ。

「通さへんよ」

 だが、シオニスの思惑を感じ取ったカグラはそれを許さない。
 カグラの背後に顕れた光の竜が分断した部隊を焼き払ったのだ。

「それが、貴方の精霊?」

「せや、俺の相棒【銀河眼の光子竜】や」

 竜の精霊の姿を見て、シオニスの頬を一筋の汗が伝う。

(精霊としての力は相当な物ね……手持ちの駒じゃ辛そう)

 竜を分析しつつ、一つ溜め息を吐くシオニス。

「もう少し時間が経ってから使うつもりだったのだけど……」

「ん? 何ややけに余裕――ッ!?」

 ニヤリと微笑むシオニスに、カグラは舌打ちする。
 城壁を取り囲むように、三方から騎士達の気配が突如顕れたのである。

「援軍、かいな」

「ええ、本当はだめ押しで使うつもりの軍勢だったんだけど……怪盗さん強いんだもんね」

 勝利を確信したような表情のシオニス。
 城壁内へ入ってさえしまえば、破壊工作で敵の戦力を削る事が出来る。
 明日仕掛ける際にも有利に働くだろう。

「怪盗の俺が言うのもなんやが、せっこい事するのぅ……」

「誉め言葉として受け取っておくわ」

「ま、ええわ。 小手先だけで勝てない相手も要るって事を教えたるわ」

「? 城の騎士もまだ出てきていない、一人で何を――」

 シオニスの言葉を遮るかのように、闇を切り裂く閃光が顕現する。

「なっ!?」

 カグラの光子竜が3体に分身――否、全て実体を伴った精霊を見て、シオニスは目を見開いた。

「相棒、とりあえず潮君達来るまで足止め頼むで!」

 カグラの命を聞き、光子竜達はそれぞれ違う場所へと散って行った。

「これで多分大丈夫やろ」

「……3体も同じ精霊を持ってるのには驚いたけど……怪盗さん一人で此所をどうにか出来ると思ってるの?」

 さらに軍勢を増やし、シオニスは騎士を進軍させる。
 カグラを足止めする部隊、真っ直ぐ城へ進む部隊がそれぞれの目標へと走る。

「あー、大人気ないんやけど……ちょいと本気出す……で!」

 目を見開き、カグラはカードホルダーから一枚のカードを取り出し右目に触れさせる。
 カグラの瞳、朱と蒼のオッドアイ。
 その右側……カードに触れた朱眼が金色へ、金のウルフヘアは銀髪へと変化を遂げていく。
 牙も爪も伸びて、まさに狼のような姿へと……。

「な、何をしたの?」

「企☆業☆秘☆密や。 ほな、行くでッ!」

 そう言った瞬間には、シオニスの目の前で騎士数機の頭が粉砕されていた。
 眼にも留まらぬとはよく言った物で、シオニスの視界にカグラが収まる事はない。
 右側で騎士の首が吹き飛んだと思えば反対側で騎士の腹に穴が開く、次の瞬間には中央の騎士もやられていく。

(な、何なのコイツ、ほんとに人間なの?)

 壮絶な光景を目の当たりにしたシオニスの驚嘆は恐怖へと変わっていく。

月光龍 ( 2015/09/24(木) 09:04 )