『知ってる顔が同じとは限らない』
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「ふふふ……お兄ちゃん達に挨拶する前に、ここを潰しておいた方が良いわよね」

 城壁の外側で少女は微笑んでいた。
 まるで恋人を待つ乙女の様であるが、彼女を見たものは一つの疑念を――否、恐怖を抱くだろう。

――『アレ』は本当に人間か、と。

 人の形は保っていれど、纏う気配は化物のそれと同質に近いのである。
 少女は炎のように赤い髪を揺らめかせ、軽い足取りで歩みを進め、王城へと一歩、また一歩と距離を縮めていく。

「さあ、仕事よ。 行ってきなさい」

 足は止めず、少女は誰もいない空間に命令を下す。
 それに応じるのは機械仕掛けの騎士の軍勢。
 その数数百と言った所であろうか。
 騎士達は無機質の体を動かし、王城へと侵攻を開始する。

「!?」

 突如現れたら異質な気配を感じとり、少女は動きを止めた。
 その瞬間、視界を焼き付かせる程の光が騎士達を襲った。
 光が通過した場所は焼け爛れ、直撃を受けたであろう騎士は跡形もなく吹き飛んだ様だ。

(被害は……50といったところかしら?)

 消えた騎士を大まかに把握すると、少女は光が放たれたであろう方向を睨み付けた。
 少女の視線の先には、金のウルフヘア、真紅のマフラーを蒔き付け、目元だけを仮面で隠す不審な人物が仁王立ちしていた。

「貴方……騎士? じゃないね。 変な格好」

 少女の言葉にガクッと肩を落とす不審者。

「初対面の人に随分な挨拶やな君。 しかも天下の大泥棒に向かって……」

「大泥棒?」

「次元を越える大怪盗、カグラ様や! 覚えとき!」

 ビシィと少女を指差し、どや顔を決めたカグラだったが、少女の表情は冷やかである。

「私はシオニス……そこ、どいてくれる? あそこ潰さなきゃいけないから」

 シオニスと名乗った少女は、仁王立ちを続けるカグラに敵意をぶつけるが、当の本人はどこ吹く風か、不敵な笑みを絶やす事は無かった。

「いやーそれは聞けん相談やわシオニスちゃん。 あの国には一宿一飯の恩があるさかい、仕事はきっちりやるで?」

「一人で何が出来るの怪盗さん?」

 強気の態度を崩さないカグラにシオニスは嘲笑を浮かべ、近くの騎士数名――否、数機と言うべきか――に指示を出し、カグラの排除を命じる。
 命令を受けた騎士は地を蹴り疾駆、カグラへと剣を降り下ろ――。

「こんなん振り回したら危ないで?」

――されることはなく、逆にカグラの掌底を食らい機能を停止させていた。

「なっ!?」

「いやー、これくらいの手合いなら何時間も足止めしてられるわ」

 軽く笑みを浮かべながら、さらっと化物染みた台詞を吐くカグラに、シオニスは一瞬呆気に取られるが直ぐに顔を戻すと新たな騎士に命令する。
 先程の倍に近い数の騎士が襲い掛かって行くが、全ての剣撃は避けられ、いなされ、時には奪われ逆に刃を向けられた。
 襲い掛かった騎士が全滅するのに、数分も掛からなかっただろう。

「この程度じゃ、俺を突破なんて出来へんで?」

月光龍 ( 2015/09/18(金) 14:07 )