『知ってる顔が同じとは限らない』
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「さってとーお仕事お仕事」

 城の城壁に登ったカグラは大きく背伸びをして、城の周囲を見回した。
 怪盗の活動時間は夜、当然彼の見ている景色は闇で静まり返っている。
 マニュアルによれば、カグラは夜間の警備の手伝いをし、怪しいものがあれば即連絡、増援を呼ぶ事になっていた。

「スズはハゲのおっさんに任せとけばええし、一緒に仲良くしようや紡ちゃん?」

「はい、こちらこそよろしくお願いいたします」

 隣に立つ紡は丁寧に会釈する。
 晋吾が監視の目的のために送ったとはいざ知らず、女性のサポーターという事実にカグラは鼻の下を伸ばしていた。

「まーこんな真夜中じゃ敵さんも動きにくいやろなあ」

「ですが夜襲は歴史的にも多いですし、気は抜けません」

「真面目やなあ紡ちゃんは」

 真面目に答える紡にカグラは苦笑を見せながら、周囲に目を配る。

「ところでカグラさん」

「お? なんや紡ちゃん? 俺の好みのタイプでも聞きたいん?」

「ち、違います!」

 顔を赤くして否定する紡に、カグラは意地が悪そうな笑みを返しなが、初な反応を楽しんでいた。

「もう……カグラさんは今回の報酬は何がよろしいですか?」

「お? それは宿でええって」

「いえ、あれは繋に勝った時の条件だったはずです」

 繋とのやり取りを思い出すカグラ。
 確かに決闘前に宿の約束をしている。

「せやけど、別に俺は構へんのやけど」

「いえ、危険な仕事を任せる以上、相応の支払いをさせていただかなければ」

 凛とした表情で引く様子のない紡に、頭を掻くカグラだったが、すぐに手を叩くと紡を指差した。

「?」

「じゃ、終わったら紡ちゃんとデートさせてくれ」

「デート……って、えぇぇ!?」

 カグラの提案に素っ頓狂な声を上げる紡。

(ふふん、これなら断らざる負えないやろ紡ちゃん! 名案やナイス俺!)

「……わ、私で良いならお相手しましょう」

「そやろ? じゃあ報酬は…………へ?」

 予想外の返答にカグラの顔に表情が固まった。
 断られるはず、否……断って貰わないとカグラの意図とは違うのだが、紡は顔を真っ赤にして俯いている。

(え? どうする俺……紡ちゃんは本気に受け取ったみたいやし、冗談なんて言うたら恥かかせてまうし……)

 なんとか打開策を打とうとするカグラだったが浮かばず、冗談とするか覚悟を決めるかの二択となる。
 しばらく何も言えずに口を魚のように開閉させていると――。

「!?」

「カグラ、さん?」

「紡ちゃん、ちょい応援呼んで来てもろてええか?」

 突如として真剣な表情を見せるカグラに、ただならぬ気配を感じて紡は走り出した。

(なんやヤバめな気配やなこれ……しかも)

 カグラが感じた気配は複数あり、全てが城へと向けて敵意を発していた。

「ま、見回りで終わるなんて思うてないけどな!」

 地を蹴り、カグラは城壁から飛び降りて気配の元へと向かうのであった。

月光龍 ( 2015/09/08(火) 09:42 )