『知ってる顔が同じとは限らない』
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「いやー勝った勝ったあ」

 決闘を終え、カグラは満面の笑みで繋の方へと歩み寄っていく。
 繋は心底嫌そうな顔でそれを迎え入れていた。

「いやー、やっぱ子孫なんやー。 しかめっ面が真木波君そっくり!」

 バンバン背中を叩かれ、繋はされるがままである。

「また、負けた……」

 がっくりと項垂れる繋にカグラは気付かずに背中を叩き続ける。
 そんなやり取りをしている二人に、観戦していた者が近付いていく。

「凄かったわ、怪盗さん?」

「お? 勝利を祝福してくれんのなら、頬っぺにチューしてくれてもええんやで桐子ちゃん?」

 調子に乗る桐子に不機嫌な表情を見せる桐子。

「調子に乗らないで……手を貸してもらう実力は申し分無いのに……この性格はどうにかならないかしら?」

「まあまあ桐子様」

 溜め息を吐く桐子を紡が宥めているのを押し退けて、晋吾はカグラへと歩み寄っていく。

「……一応部屋を用意した。 国王にも話も通してある。 後で案内させる」

「お、手配が早いやん潮君」

「二部屋あるから好きに使え」

「おおきに」

 勝利したカグラへの報酬を伝えた後、晋吾はある書類をカグラに突き出した。

「これが城内外の警戒ルート及びマニュアルだ。 眼を通しておけ」

「んーなんや面倒やけどわかったわ」

 嫌そうな表情をしながらもしっかりと書類を受けとるカグラ。

「あら、警備隊長様は少し渋るかと思ったのに」

「……手を借りた方が国のためであると判断した。 私情は挟まん」

 と、だけ言うと晋吾は一人で歩き去っていった。

「あらあら、行っちゃったわね。 まあ、私も見回りあるし……紡」

「は、はい」

「私と繋は見回りに戻るから、紡はお客様を案内してあげて」

 指示を聞いて繋はすぐに桐子の元へ駆け、側へと寄り添った。

「じゃ、お願いね」

「おい、怪盗! 次は負けないからな!」

 そう言って桐子と繋も見回りに戻るべく通路の向こうへと消えていった。

「何か、あれやな……真木波君はいつもこんな気分なんかなあ」

 いつも自分が遊騎に向かって言っているであろう捨て台詞を受けて、カグラは感慨深げな表情を見せるが……きっと、恐らく……否確実にカグラと遊騎の感じている気持ちは違うだろう。

「では、こちらへ」

 案内を任された紡は堂々とした面持ちで城を案内していく。
 渡り廊下を通り、来客用の別棟へと足を踏み入れると、壁や装飾品を見るに、城内より新しい建物と予想出来た。

「ほほーええ建物やな」

「ええ、お客様に不満を持たれては騎士の恥ですから」

 カグラの言葉に誇らしげに返す紡は、上機嫌で奥へと進んでいく。
 その後ろ姿を微笑ましそうに見ているカグラだったが、内心気が気でなかった。
 隣を歩く少女、五十鈴がずっと黙ったままであり、ジッとカグラを見ているのである。

(なんや、スズ。 言いたいことあるなら言って良いんやで)

 意を決し、紡には聞こえない程の声で五十鈴に尋ねることにした。

 ギロリ、と五十鈴が視線を動かしカグラと目を合わせると、微かに口を尖らせた。

月光龍 ( 2015/08/26(水) 18:54 )