『知ってる顔が同じとは限らない』
02


 次元を繋ぐ回廊をカグラ達は、巨大な竜の背に乗って進んでいた。
 回廊、とは言っても名ばかりで、闇で覆われた宇宙空間のような場所であり、所々に次元の入り口に当たる光の渦のようなものがあるだけである。

「のう相棒、今回は何処へ連れてってくれるんや?」

 カグラは闇を裂いて飛行する自身の精霊、『銀河眼の光子竜』に問い掛けた。

――オォォ!

 カグラの問いに短く咆哮を返す相棒の姿にカグラは微笑んだ。

「おーおー、気合い入っとるのう。 相変わらずなに言うとるかわからんけど」

――オォォ……

 明らかに落ち込んだ鳴き声に、様子を見ていた五十鈴は苦笑を見せる。

「……何故勝てぬのだ……精霊である私が人間に」

 竜の背の隅で縮こまっている巨漢が一人……。
 そう、ガンダーラである。

「ガンダーラ……頑張って」

 年端も行かない主に慰められ、逆に落ち込んでしまうガンダーラであった。

――ッ! オォォ!

「のわっ!?」
「キャッ」
「ぬわああああ」

 何かを見付けたのか竜は急に方向を変え、手近にあった渦の中へと入り込んでいった。
 眼も眩む様な閃光を潜り抜け、次の瞬間に視界に映り込んだのは巨大な城が聳え立つ大地。
 竜は城を囲むように広がる城下町へと向かっているようだ。

「なんやなんや相棒!? 少し落ち着け、な!?」

 カグラの声が届いていないのか、一直線に城下町、その中心部に位置する広場へと降りていく。
 間もなく竜は地上に降りると、実体化を解き姿を消した。
 当然背に乗っていたカグラ達は足場を失い、落下を始めていく。

「キャー!」

「だああああ! いつになく気分屋やなあ相棒!?」

 カグラは叫ぶように悪態を吐きながら、悲鳴を上げる五十鈴を抱き寄せ、腰に掛けたポーチから拳銃を取り出し、間髪いれずに近場の建物に向けて引き金を引いた。
 発射されたのは銃弾ではなく、ワイヤーに繋がれた杭のようなもの。
 杭が建物の壁に突き刺さったのを確認すると、カグラは銃の側面に付いたレバーを下に押し込む。
 甲高い音を立てて内部の機構が作動を始め、ワイヤーを巻き取り始める。
 下へ向かっていた体は真横へベクトルが変わり、カグラと五十鈴を引っ張っていく。

「っと」

 あわや激突、という瞬間にカグラは巻き取りを停止、壁に足を着く。
 すぐさまレバーを上に操作、ゆったりと下降、着地する。

「ふんぬっ!」

 精霊であるガンダーラは歯を食い縛って着地の衝撃を耐えていた。

(……君、精霊なんやから実体解けばええんとちゃうん?)

 と、カグラは思ったが、口にはしなかった。


月光龍 ( 2015/07/14(火) 14:33 )