『知ってる顔が同じとは限らない』
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「あー、気にせんといてー」

 五十鈴の頭を撫でながら、カグラは言うが四人の興味ありげな視線は途切れはしない。

「精霊の力? 否、それは感じなかったし」

 未知の力に好奇心を膨らませる桐子、それと逆に晋吾は警戒心を顕にする。
 カグラはため息を吐くと説明を始める。

「五十鈴はサイコデュエリスト言うてな? ディスクで映し出されたビジョンを具現化出来るんや」

「カ、カグ君」

「いや、言わんと怪しまれるさかい、堪忍な」

 五十鈴を睨み付ける晋吾に目配せしながら、カグラはまた五十鈴を撫でた。

「?それってモンスターを実体化させるだけだろ? 俺達もお前も出来るじゃないか」

 繋がさも当たり前のように言うが、カグラは不敵な笑みを見せた。

「真木波君と同じ反応やなあ……サイコデュエリストはな、精霊の宿らないカードの実体化も可能なんやで」

「精霊の宿らない?」

 いまいちピンと来ていない一同を見てカグラは楽しそうな笑みを浮かべると、1枚のカードを五十鈴に渡した。

「実際に見てもろた方が早い」

 五十鈴は頷くとディスクにカードを差し込んだ。
 するとディスクが機動を始め、ビジョンが実体を持って出現する。

ポン

ポン

ポン

ポン

 と、小さな羊が四匹並んで可愛らしく鳴いた。

「≪スケープ・ゴート≫……なるほど」

 一番に気付き驚きの声を上げたのは紡で、羊に近付いて頭に触れた。
 触られた羊は気持ち良さそうに眼を細める。

「魔法・罠も実体化させる事が出来るのですね」

 紡の言葉に桐子達の表情が強張った。

「ま、発動条件とか絡んでくると使えんもんもあるらしいけどな」

「……ミラーフォースとか、サンダーボルトとかなら」

 控え目に言う五十鈴だったが、その内容は壮絶の一言で。
 聞いた四人全員が目を見開いていた。
 当然の反応だろう、五十鈴が挙げたカードはどちらも強力な部類に入るパワーカードであり、ある次元では使用を禁じられたり、制限される程の物だ。
 それを現実で行使出来る。
 想像しただけで怖気が走る程の惨状が広がることだろう。

「ま、五十鈴はそんな感じや。 基本ええ子やから安心してええで?」

 と、桐子達の視線は変わりはしない。
 一人を除いては。

「? どした潮君」

 考える素振りを見せた晋吾に気付き、カグラは尋ねた。

(なんや嫌な予感はするけどな)

「……今俺達は戦争している状態だ。 少しでも戦力が欲しい」

(あー、やっぱそう来る?)

「彼女のような能力を持った人材が居れば、戦いも有利になる」

 そこで一度言葉を切り、五十鈴を真っ直ぐに見据えると晋吾は頭を下げた。

「率直に言う……俺達に力を貸してくれ」

(あの潮君が頭下げるとはのー……相当切羽詰まっとるんやねえ)

 幼い少女相手に頭を下げる晋吾にカグラは苦笑する。

「マスターが頭を下げるなんていけませんわ!?……それも幼女を相手に」

 天変地異でも起こったかのような慌てっぷりにランスロットが姿を表した。

「黙れランス。 協力を請う相手にはそれ相応の礼を払う、当たり前の事だ」

「それは、そうですけれど……」

 いまいち納得出来なさそうなランスロットだが、意を決したように自分も頭を下げた。

「マスターだけに頭を下げさせられませんわ。 私からもお願い致します」

「ど、どうしよカグ君?」

 丁寧にお願いされた五十鈴は戸惑うが、カグラの答えは決まっている。

月光龍 ( 2015/07/25(土) 13:00 )