『知ってる顔が同じとは限らない』
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「もうちょっと見せてくれ……」

「あ、動画もあります」

 繋が頼むと、五十鈴は操作して動画が再生される。


 動画は狭い部屋のソファーに座る赤髪の青年を映し出した。
 青年はカメラに気付くと、慌てて立ち上がりカメラに眼を向ける。

『クリスさん、何で動画なんか撮ってるんですかね?』

 少し恥ずかしそうな青年、遊騎の声。

『いやー五十鈴ちゃんが居なくなっても私達の事を忘れない様に、と思いまして。 ささ、所長一言お願いします!』

 事務所の所員であろう女性に急かされ、頬を掻いていた遊騎だが、一度深呼吸してからカメラの方を向いて言う。

『五十鈴ちゃん、俺達は何時でも君の笑顔を願ってる。 困ったら何時でも力になるからさ、何時でも遊びに来るといい。 所員全員いつでも歓迎するよ。 後、カグラに泣かされたら言ってくれ、思いっきりぶん殴ってやるからさ』

『では、ガー子さんもどうぞ!』

 瞬間的にカメラが動いて、山吹色の髪をポニーテールに結った騎士を映す。
 騎士ガウェイン――ガー子と呼ばれていたことに異世界の住人は微かに首をかしげた――は自分に振られるとは思っていなかったのだろう、顔を赤くして慌てていた。

『クリス!? 私は必要無いのでは?』

『駄目ですよガー子さん。 五十鈴ちゃんのためですから』

『うぐっ』

 一度呻いた後にガー子はため息を吐いてから口を開く。

『遊騎も言ったが、いつでも力になろう。 不肖この私も力を貸そう』

 二人のメッセージが終わった所で五十鈴は大事そうに携帯をしまい込み、微笑んだ。

「これが私達が知っている探偵さん達です」

「……成る程、違う世界の英雄、か……ふん、想像通りの人物のようだな」

 晋吾は薄く笑みを浮かべて言う。

「なんか、もっと固い人なのかと思ったけど、そんなでもないのな」

「そうね、皆から崇められるような人だもの。 私もそう思っていたわ」

 繋と紡も可笑しそうに笑っている。

「事件に関わった人間を笑顔にしたい、それが真木波君の行動理念や」

「笑顔に、か……」

 その一言に桐子は考える素振りをみせる。

「そうね、戦いのなかで大切な事を見失う所だったわね……騎士のすべき事」

 得心したように語る桐子。

「人々が笑顔で居られる場所を守る、それに闇も光もありはしないわ」

 繋と紡は頷いていたが、晋吾だけは顔をしかめていた。

「ま、つーわけや。 俺が異世界から来たっつー事、異論あるかいな?」

 カグラの問いに四人は首を横に振る。
 その様子に気をよくしたカグラはもう一度ライバルの像を眺めた。

「いや、しっかし精巧な像やなあ。 真木波君はそっくりやん」

「? ガー子さんも似てるよカグ君」

 五十鈴が不思議そうに尋ねると、カグラはチッチッチと指を横に振った。

「よく見てみいスズ」

 指を差した先は……ガウェインの胸の辺り。

「胸が3センチ位盛られ――ぶへぇ!?」

 像と本物の違いを力説するカグラに、五十鈴が放った氷の塊が直撃した。

「痛いわスズ……」

「ふん」

「五十鈴ちゃん、だっけ? 今の氷は……?」

 桐子が五十鈴が放った氷を指差して尋ねると、五十鈴はハッとした顔になってカグラの後ろへ隠れてしまう。


月光龍 ( 2015/07/22(水) 14:37 )